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2010年2月 1日 (月)

第一回目キャンペーン

10/2/1(601号)経済コラムマガジン

第一回目キャンペーン

  • 財政再建運動とその節目
    先週号で、少なくとも今まで、騒がれているほどには日本の財政に問題がなかったことを説明した。しかし筆者の観測では、これまでマスコミを通じ日本の財政 が危機という大々的なキャンペーンが張られたことが2度ほどある。最初のキャンペーンは、先々週号で取上げた鈴木善幸首相の「財政非常事態宣言」が出され た頃である。この時には公債の発行残高が100兆円に迫っていた時期であった。

    二 度目は、本誌がスタートした96年から97年にかけたあたりで、第二次橋本政権時代である。橋本自民党は、行財政改革を掲げ先の衆議院選挙で大勝してい た。ちょうどこの頃、国と地方の長期債務残高が500兆円を越えそうになっており、新たなキャンペーンが始まった。財政再建運動はこのような節目に会わせ て行われてきた。

    無責任なマスコミのキャンペーンであるから、10/1/18(第599号)「財政非常事態宣言」の 城内実衆議院議員の質問主意書にあるように、財政危機と騒いでいる割に根拠はとても薄弱である。例えば金利がジワジワと上昇してきたといったような客観的 で科学的な事実は全くない。しかしこのようないい加減なキャンペーンであっても、大衆は動かされ、最終的に政治も動く。


    鈴木善幸政権時代前後に公債発行が増えた経緯は前述の10/1/18(第599号)「財政非常事態宣言」で述べた。そして大平・鈴木・中曽根政権時代の行財政改革(いわゆる増税なき財政再建運動)によって日本経済は間違った方向に動いた。

    ゼ ロシーリングなどで財政支出の伸びが抑えられた。例えば整備新幹線の工事も「三大バカ査定」の一つと罵られストップさせられた。しかし日本は既にデフレ経 済に突入していた(後ほど触れるが、この事を指摘する者は少ないが重要である)のに、財政支出を抑えれば経済が外需依存に傾くのは当然のことであった。


    ま たタイミングが悪く、当時のレーガン政権の間違った高金利政策(FRB議長はボルガー)によってドル高・円安が続いた。したがって内需は緊縮財政で不振で あったが、輸出がどんどん伸びたので日本経済もそこそこ成長した。これによって人々は財政再建と経済成長が両立するといった錯覚に陥ったのである。

    こ のような外需依存となった日本経済に冷や水を浴びせたのは、85年の「プラザ合意」による超円高であった。円相場は米ドルに対して220~250円程度で 長い間推移していたが、短期間のうちに150円台(最終的には120円台)まで急騰した。これによって日本は酷い円高不況に襲われたため、日本はこれを契 機に方針だけは内需拡大に大転換することになった。

    しかし日本には財政再建にこだわる雰囲気が残っており、景気対策は財政支出ではなく金 融緩和にウエートを置いたものになった。この金融の超緩和が続き土地ブームと株ブームが起った。いわゆるバブル経済である。ところがこのようなバブルがい つまでも続くはずがなく、最後にバブル経済は崩壊し、日本経済は今日でもこの後遺症で苦しんでいる。しかしバブル生成の元をたどれば、「財政非常事態宣 言」などの非科学的な根拠による財政再建運動であった。


    ちなみに中国は、日本のこの失敗を知っているから、どれだけ非難を受けようと頑として人民元高を拒否している。一昨年まで人民元は少しずつ高くなっていたが、昨年からは米ドルに完全にペッグしている。


  • 公的年金の積立金の推移
    筆者の持論は、オイルショックの後(75年頃)から、日本経済はずっとデフレが続いているということである(これについては将来また取上げる)。つまり田 中角栄首相の列島改造ブームによるバブル経済が崩壊した頃から、日本のデフレはスタートしたと考える。要因の一つとして大きな土地の売却代金が実物経済に 回らず、金融機関に眠ったままになったからである。これについては04/10/4(第361号)「日本経済のデフレ体質の分析(その1)」から04/10/18(第363号)「日本経済のデフレ体質の分析(その3)」の3週で述べた。

    ここでは日本経済をデフレ体質に陥らせた要因は主に二つあり、その一つが土地の売却代金と述べた。しかしもう一つの要因は年金の積立金と指摘したが、これについてはそれ以上ほとんど言及しなかった。


    そこで今回、公的年金の積立金の推移をここに示す(この表は今後何回か使う予定)。
    (積立額合計の推移 単位:兆円)
    年 度積立金合計
    7836
    95162
    96171
    97179
    98186
    99193
    00196
    01195
    02197
    03197
    04198
    05193
    06191
    07188

    この数字は厚生労働省のHPから拾ったものである。しかしHPには95年度以降の数字しか掲載されていない。78年度の36兆円という数字は年金に関する他のHPで見つけたものであり、多少信頼性に劣ることは承知している。しかし敢てこの数字を使わせてもらう。


    それにしても99年度までもの凄い勢いで公的年金の積立金残高は増えている。78年度から99年度の21年間に157兆円も増え、年平均の増加額は7.5兆円であった。民間の貯蓄に加え、政府はこのような巨額な貯蓄を溜めこんだのである(特別会計の大黒字)。

    し かもこれは公的年金の積立金だけであるが、これ以外に民間も私的年金を溜めこんできた。つまり日本では将来に備えて民間も政府も貯蓄してきたのである。こ れでは消費が増えず経済がデフレから脱却できないのは当り前である。また政府はこの不足する有効需要を補うための景気対策として、国債を大量に発行してき たのである。しかしこれだけ貯蓄が増えれば、金利が上昇することなく、大量の国債がきれいに消化されるのも当然である。


    最後に、 82年の「財政非常事態宣言」が出された頃の財政状況を推定してみる。手元に82年当時の公的年金の積立金の金額がないため、増加額の様子からこれを推定 するほかはない。筆者はこの数字を60兆円程度と推計した。また外貨準備高は、240億ドル程度であり当時の為替レート250円で換算すると6兆円とな る。

    つまりOECDの基準による純債務を計算するための控除額は、筆者の推計ではあるが外貨準備と公的年金の積立金だけでも66兆円にな る。たしかに国の債務総額は100兆円に迫る公債に加え色々な債務があった見られる。しかし純債務の残高となればたかが知れている。つまり財政危機なんて 全くの作り話であったのである。ちなみに82年度のGDPは273兆円であった。


    財政当局も国債が大量に発行されても、それを消 化するに余るある貯蓄が一方で発生していることを知っていたはずである。そしてこの巨額の貯蓄を土地投機に誘導したことによってバブルが発生したと言え る。後知恵ではあるが、当時としては、地価の高騰を抑える施策と公的年金を増やさない政策を講じるべきであったと言える。


来週は、二回目の財政再建大キャンペーンを取上げ、さらにマスコミの財政危機の基準が変わってきていることについて述べる。

読 者のエコノミストの方から、先週号で記した日銀の国債保有額は69兆円(日経新聞)ではなく、直近では73兆円に増えているという情報をいただいた。また 国の債務の名目GDP比率を104.6%(これも日経新聞)としたが、この出所がOECD Economic Outlook No. 86の付属表ということである。筆者としては、このような情報は有難いものと思っている。

2010年1月25日 (月)

日本の財政構造

10/1/25(600号)経済コラムマガジン
http://www.adpweb.com/eco/eco600.html

 日本の財政構造

  • 純債務残高の名目GDP比率
    人々は日本の財政が危機と簡単に決めつけている。専門家と呼ばれる人々も同じ発言を繰返している。しかし筆者に言わせれば、この根拠が極めて薄弱である。これまで根拠にされているのは主に以下の二つである。

    一 つは単純に政府の債務残高が大きいということである。もう一つはちょっと科学的で、名目GDPに比べ日本政府の債務残高が大きいということである。最近で はこの比率が188%(07年IMF算出)にも達しているとマスコミは警告している。先進各国の比率が100%前後なのに対して、日本の比率が突出して大 きいことを問題にしているのである。


    しかし本誌は、ずっと04/12/13(第371号)「第一回財政研交流会」な どで指摘してきたように、国の債務を問題にするなら単純な債務残高の合計ではなく、純債務残高を用いることを主張してきた。純債務残高は総債務残高から政 府が持っている金融資産などを差引いたものである。特にOECDの基準では、純債務残高を金融資産に加え社会保障の基金も差引いて算出している。GDP比 率もこの純債務残高で算出すべきであり、国際比較にもこれを用いるべきである。

    これは当然の話である。借金があっても、一方に預金などの 金融資産があれば、本当の財政状態を見るには借金から金融資産を差引くのが当たり前のことである。ところが日本における財政論議は、ほとんどの場合、純債 務残高ではなく総債務残高で行われてきた。なぜか日本のマスコミなどは常に大衆を騙そうとしているみたいである。

    筆者が純債務残高にこだ わる理由は、先進国の中で日本の金融資産と社会保障の基金(以下、両者の合計を金融資産等と表現する)が突出して大きいからである。この膨大な金融資産等 を総債務残高から差引いて債務残高のGDP比率を算出すれば、数値は先進各国にぐっと近付く。しかし財政再建狂信者と、人々を脅かすことを商売の種にしているマスコミはこれまでなかなかこの数字を使おうとしなかった。


    ここまでの話を具体的な数字で示す。日本政府の総債務残高には 864兆円(09年11月財務省公表)という数字が今日よく使われている。一方、日本政府の持っている代表的な金融資産は外貨準備である。09年12月末 の外貨準備高は、10,494億ドルであるから1ドル91円で計算すると95兆円になる。

    社会保障の基金の代表は、公的年金の積立金である。08年3月末の公的年金の積立金は188兆円である(よく120兆円という数字が使われるがこれは厚生年金だけ)。したがって総債務残高864兆円か ら両者(金融資産等)の合計を差引くと585兆円になる。これを08年度の名目GDP493兆円で割返すと119%となり他の先進各国にかなり近付く。


    し かし119%という数字は外貨準備と公的年金の積立金だけを差引いて算出したものである。他にも政府の金融資産や社会保障の基金があり、これらも差引いて 純債務残高は算出される。ちなみに日経新聞の1月22日付の記事では、日本の純債務残高の名目GDP比率を104.6%としている。

    この 記事によれば、他の先進各国の純債務残高の名目GDP比率は65%程度(米・英・独・仏)である。ただイタリアが少し悪くほぼ日本と同程度である。しかし その程度なのにどうして日本だけが政府の債務残高を過去30年の間、大問題にされてきたのか不思議なくらいである。なにか新型インフルエンザでカラ騒ぎを している国が、日本だけという話に通じている。


  • オオカミ少年の言葉
    問題にすべき日本の債務残高の名目GDP比率が、188%ではなく104.6%であることを前段で説明した。しかし日本の財政状況をさらに正確に見るにはこれだけでは十分ではない。それほど日本の財務構造が特殊なのである。

    そ れは中央銀行である日銀が日本国債を大量に保有しているからである。本誌で何回も説明したように、日銀が保有する日本国債の69兆円(09年12月30日 付日経新聞)は実質的に国の借金にならない。ちなみに中央銀行が自国の国債を大量に保有しているのは日本と米国くらいである(発行額の15~16%)。ド イツとフランスはほとんどゼロであり、英国が5.5%(英国は昨年、中央銀行による国債の買取りを久々に再開したためこの数字は少し大きくなっていると思われる)程度である。


    日銀が日本国債を買えば、日本政府が日銀に国債の利息を払うことになる。しかし日銀の収益は最終的に国庫、つまり国に納付される。要するに国が日銀に支払った利息は国に戻ってくるのである(準備金を除いて)。

    連 結決算で見れば、国が親会社とすれば日銀は子会社である。日銀の保有する国債は、親会社(国)の子会社(日銀)に対する債務であり、子会社(日銀)から見 れば親会社(国)に対する債権になる。両者の決算を連結する場合、両者の債権・債務は相殺される。また日銀が持っている準備金も国のものである(まさに認 可法人である日銀が持っている埋蔵金である)。


    つまり日銀が保有する国債は、実質的に国の債務にならない。日銀の国債保有額69 兆円を名目GDPの493兆円で割り返すと14.0%になる。つまり日銀の保有する国債を除いた、実質的な純債務残高の名目GDP比率は90.6% (104.6%-14.0%)となり欧米諸国と遜色ないものになる。

    たしかに日本には巨額の金融資産や社会保障の基金があり、さらに日銀 が大量に国債を購入していると言った特殊な事情があり、財政の状況が分かりにくいのは事実である。しかしこのように段取りを追って説明すれば、少なくとも 最近までは日本の財政は問題はなかったことをご理解できるであろう。また金利が世界一低い水準で推移していることを見れば、日本の財政だけが問題にされる のはおかしな話である。


    筆者は、当初は色々な思惑があって(消費税の導入など)、財政当局が日本のマスコミを唆し(そそのか し)、日本の財政が悪いことを喧伝させたと見ている。これをきっかけにとにかく大衆を脅かすことで注目を浴びたい日本のマスコミは、何も考えず30年近く 間違った情報を流し続けて今日に到ったのである。

    ところが日本のマスコミは暴走を始めており、今さら日本の財政に問題はなかったのだとは 言えなくなっている。マスコミを利用して軍国主義を煽った軍部が、マスコミに煽動された国民を抑えきれなくなり、戦争に突入せざるを得なくなった日本の戦 前の状況と似て来た。このようにマスコミを利用することはリスクも高いのである。この結果、長年に渡る間違った情報(日本の財政が悪い)に基づく誤った経 済政策のため、むしろ日本経済本体の方がガタガタになった。


    筆者は、日本の名目GDPが伸びないというより減少していることを危惧する。雇用者所得だけでなく税収も大きく減少するステージに入ったのである。これでは財政を用いた経済政策がますます難しくなる。

    「日本の財政が危機」というオオカミ少年の言葉が繰返され、これが本当の日本経済の危機を招き、さらにこのことによって本物の財政危機を招く可能性が出てきた のである。しかしこのような困難な状況を打破する処方箋は残っていると筆者は考える。それには今週述べた日本の財政の特殊な構造を理解することが必要であろう。


来週は、今週取上げた日本の財政構造を踏まえ日本の財政が危機という話がいかにいい加減であったかを説明する。

2010年1月18日 (月)

財政非常事態宣言

10/1/18(599号)経済コラムマガジン
http://www.adpweb.com/eco/eco599.html

財政非常事態宣言

  • 虚言・妄言のルーツ
    世の中では「本当ではない事」、あるいは「真実ではない事」が、あたかも「常識」として通用している。どういうわけか特に日本にこのような例が昔から多い。筆者はこれらを虚言・妄言の類と呼んでいる。

    最近の例としては新型インフルエンザ騒動である。他の国に比べ、日本ではこのインフルエンザに対する対応が異常であった。街には多数のマスクを付けた人々が行き交っていた。世界中でこのような無気味な光景が見られるのは日本だけである。


    し かし新型インフルエンザが流行し始めた頃、ある専門家がテレビ番組に出演し、それほど心配する必要はないと言っていた。この話が論理的で説得力があったた め、筆者は最初から何も心配していなかった。この良心的な専門家は「今回の新型インフルエンザの毒性は弱い。また日本では在来型のインフルエンザでも毎年 1万人くらいは死んでいる。」と説明していた。もちろん死亡のほとんどはインフルエンザによる合併症による。

    後の様子を見ていると、この 専門家の話は本当であった。新型インフルエンザは、感染力はなかなかのものであったが、在来型のインフルエンザに感染して毎年1万人程度が死んでいること を考えると、死者の数(ほとんど合併症による)は極めて少ない。今日、人々は新型インフルエンザにほとんど興味を示さなくなっている。


    し かし新型インフルエンザ発生当初はマスコミも大騒ぎをしていた。いい加減な評論家がテレビに登場し、一ヶ月くらい外出できなくなるおそれがあり、食料品を 大量に買いだめしておくことを勧めていた。翌日、スーパーには「食料品の買い備えは当店で」という張紙が貼ってあったのには筆者も驚いた。

    前 述の専門家だけでなく、ほとんどの医療関係者は、最初から今回の新型インフルエンザが大したことがない事を知っていたふしがある。しかしマスコミに登場す ると、このような専門家の多くは新型インフルエンザの脅威を強調していた。このようになったは、日本のマスコミやメディアが、真実を伝えるより、人々を脅 かすことに重点を置いた報道姿勢にあるからと筆者は見ている。


    新型インフルエンザの例に見られるように、日本のメディアは科学的 に物事を追求しない。この結果、日本では虚言・妄言の類がはびこるようになった。また虚言・妄言の類が「常識」となっている日本においては、むしろこれら に異論を唱えるまともな論者はマスコミやメディアから排除される。

    日本では数々の虚言・妄言の類が流布しているが、その中で断トツで問題 なのは「日本の財政が危機」という大嘘である。これによって日本の経済政策はずっと誤ったり大きく制限されてきた。名目GDPの減少を見ていると、このこ とによって日本経済の方が本当に危機的状況に陥ったと感じる。


    「日本の財政が危機」という虚言・妄言のルーツは、06/2/13(第424号)「大衆社会における経済論議」で取上げた鈴木善幸政権の1982年「財政非常事態宣言」である。これ以降28年間、日本の財政運営はこの間違った路線の延長線上を進んでいる。筆者は、今日の日本経済の危機と没落を招いたきっかけは「土光臨調」とこの鈴木善幸首相の「財政非常事態宣言」と考えている。


  • 城内議員の質問主意書
    最近、この鈴木善幸政権の「財政非常事態宣言」の問題を取上げたのが、城内実衆議院議員(無所属)の質問主意書である。質問主意書は政府の見解を問うことを目的に議長に提出される。これは国会議員の権利であり、政府はこれに回答しなければならない。


    昨 年12月2日に提出された城内議員の質問主意書は、経済モデルによる分析がないまま政府高官が予算規模に言及している問題を糾すものであった。質問事項は 「経済モデルを使った新規国債発行額」「国債残高と日本国債の信認」「財政危機の認識」の三つである。経過は省略するが、筆者の手元に質問主意書作成に 使った基礎資料のコピーがある。

    質問主意書の一つ目の要旨は、予算規模を決めるには、これによって経済活動のレベルに影響を与えるのだか ら、予算規模の違いによってどの程度経済指標に違いが出てくるのかを示す義務があるのではないかというものである。二つ目は国債の信認は、国債発行残高で はなく経済の状態ではないかというものである。

    そして三つ目は、明確な根拠を示さないままこれまで「財政非常事態」「財政危機」と言われ てきたことに対する見解を問うものである。この質問主意書に対する政府の回答は、おざなりなものでありここでは省略する。筆者は全面的にこの質問主意書の 内容に賛同する。特に三つ目の「財政危機の認識」に強い関心を持つ。


    鈴木首相の「財政非常事態宣言」が出た当時、日本の国債発行 残高は96.5兆円と今日の10分の1程度であったと、城内議員の質問主意書は指摘している。当時、こんなに大量の国債を発行していたなら必ず金利が高騰 すると言われていたものである。しかし質問主意書で言っているように、82年当時の8%から今日の1.2%と、反対に長期金利は下がる一方であった。

    城 内議員は、根拠を示さないまま政府が「財政非常事態」「財政危機」と言った表現を使うことを強く批難しているのである。実際、国債残高が増え続けているの に、物価は下がり長期金利も下がり続けている。28年間も「財政危機」を唱え続けてきた日本政府はまさに「オオカミ少年」である。


    質問主意書の作成に使った基礎資料には、「財政非常事態宣言」当時の新聞記事のコピーが付いている。新聞記事は朝日新聞のものであるが、他の報道機関も似たことを言っていた。まず当時の経済状況を振返る。

    二 回のオイルショック後の経済不況に対して日本は大型の財政出動を行った。また内需不振を受け、企業は輸出に活路を見い出していた。これらによって日本経済 は回復していたが、財政赤字は累積していった。これには物価が上昇しなくなったことも影響している。大平・鈴木内閣は財政再建のための新型間接税(後の消 費税)の導入を模索していた。ところが鈴木政権の最後の半年あたりに世界的な不況となり、最後の頼みの綱であった輸出が減少し、日本経済も不調になった。


    鈴 木内閣は不況で税収不足なのに景気対策に迫られる窮地に立った。大蔵省は、鈴木政権の公約である1984年の赤字国債からの脱却を断念した。さっそく朝日 新聞は「財政、サラ金地獄に」(1982年9月2日)とこの方針転換を批難した。このようなマスコミの雰囲気の中、9月16日に鈴木首相は記者会見で問題 の「財政非常事態宣言」を行った。

    「財政非常事態宣言」の中で、財政再建のため「聖域を設けない歳出のカット」などを行うとした。しかし これらに対してのマスコミの反応は「財政再建の展望が示されていない」と意外に厳しかった。増税を警戒するマスコミは、一段の歳出カットを求めていたので ある。朝日の論壇には「望まれることは良識の星、土光臨調会長への支援」という意見まで現れた。


    「財政再建」の公約が破たんしたと、マスコミはこの後も鈴木首相を責め続けた。とうとう鈴木首相は10月12日に退陣を表明することになる。「財政非常事態宣言」を行って一ヶ月も経っていなかった。

    今 日の10分の1程度の国債発行残高しかなかった28年前から、政府とマスコミは財政危機と騒いでいたのである。また大平・鈴木内閣は何の根拠もなく財政危 機を警戒し財政の再建を訴えていた。そしてマスコミに登場する財政学者(御用学者)は「今の財政の赤字が続けば、そのうち金利は上昇し制御が困難なハイ パーインフレに陥る」と人々を脅していた。しかしこれらは今日から見れば大笑いのセリフである。

    しかし28年経った今日でもマスコミの論調は当時とほとんど同じなのである。マスコミに洗脳されている国民の雰囲気も変わらない。例えば土光臨調に当るものは今日の「事業仕分け」であり、無駄を削れば財政が健全化すると国民・大衆は思い込まされている。


来週は、本当に日本の財政が危機的状況なのかを検証する。

2010年1月11日 (月)

10年今年の景気

10/1/11(598号)経済コラムマガジン
http://www.adpweb.com/eco/eco598.html

10年今年の景気

年頭にあたり、恒例によって今年の景気を占う。ただし今年と言っても、暦年と年度の二つベースがある。経済の変動が穏やかな時は、両者に大きな差異は生じ ない。しかし一昨年の9月のリーマンショックのような大きな出来事があった場合、暦年と年度ではある程度の違いが生じる。本誌の場合、過去において多少曖 昧であったが、今後、特に断りを入れない限り暦年ベースと見てもらいたい。


今年の景気を予想する前に、昨年の予想09/1/12(第553号)「09年今年の景気」を検証する。当時はリーマンショックで世界中の経済が混乱し、その後の政府の対応がよく見えなかった。しかしその割には日本経済はほぼ本誌の予想通りの推移となった。

まず消費は1~2%の減少を覚悟すべきであるが、消費不況(5~10%)という状況にはならないと述べた。消費支出(対前年)の動きを見ている限り、この予想は当りそうである。4月までは対前年でマイナスであったが、5月以降は概ねプラスで推移している。

た だ11月のプラス2.2%という数字にどうしても納得が行かない。筆者は10月辺から日本経済が二番底に向かい始めたと見ている。賃金カットなどで現金給 与総額が減り続けているのに、消費だけが堅調ということが腑に落ちないのである(たしかに前年同月のリバウンドとも考えられるが、前年11月の消費支出 (対前年)は0.5%のマイナスと、前後の月に比べマイナス幅は比較的小さかった)。

設備投資は大不調を予想したが、対前年で 20%を越えるマイナス(法人企業統計)が続いている。これは筆者の予想より大きいマイナスと言えよう。設備稼働率が上がっているのに一向に設備投資が増 えない。稼働率のレベルがまだ低いため、設備投資は海外が中心になっていると考える他はない。

公共投資は麻生政権の景気対策で増えた。少 なくとも10月までは日本経済の下支えになっていた。しかし公共投資の金額自体が小さくなっており、とても日本経済を牽引するものではなかった。ところが 政権交代があって、工事がストップした案件が多く、11月の公共工事請負額はとうとう0.0%とマイナスに転じた。

住宅投資は不調であった。「新設住宅着工件数は100万件を割込みそう」と予想したが、実績は80万件程度と筆者の予想をさらに下回りそうである。

輸 出は予想通りある程度持直した。昨年の今頃はリーマンショックの影響で輸出が最悪であった。しかし企業は需要を海外に求めざるを得ない状況に追込まれてい る。新興国の経済が持直したこともあり、日本の貿易・サービス収支も5月から黒字に転じた。ただし貿易・サービス収支の黒転には輸入物価の大幅な下落も影 響している。

昨年の予想では「2%程度のマイナス成長」とした。GDP統計を見ている限り、実質経済成長率は今のところほぼこの線におさ まりそうである。一方、物価の下落によって名目経済成長率はかなり落込みそうであり、最悪の場合、5%近くのマイナスを覚悟すべきである。そして500兆 円程度を維持してきた名目GDPは、とうとう470兆円台まで縮小することになった。


  • 自民党政権が続いている?
    年度ベースで今年の経済成長率の政府見通しは、実質1.4%、名目0.4%となっている。筆者は、政権交代があったため、一段と経済成長率を予測することが少し難しくなったと思っていた。大したことをやらないと分っていた自民党政権時代の方が読みやすかった。

    一 方、民主党連立政権には色々な考えの人々がいて、誰の主張に沿った政策が実行されるかによって結果がかなり異なってくると思われた。しかし「事業仕分け」 が世間の脚光を浴びたことでこの読みが狂った。これによって民主党が間違った方向に進む可能性が大きくなったと筆者は見ている。


    こ のままでは財政出動による内需拡大政策などとても実現しない。ただ2月の初旬に公表される10~12月のGDP統計の速報値が注目される。これで相当悪い 数字が出る可能性がある(筆者はかなり悪いと見ている)。GDPの落込みの程度によっては、民主党連立政権の雰囲気がガラッと変わることも考えられる。

    し かし筆者は今のところ民主党連立政権のマクロ経済対策には大した変更はないと見ている(国民新党などが主張するような大胆な積極財政が採られる可能性は小 さい)。したがってやっていることは公設派遣村に見られるような、目に付く問題に対するその場しのぎの対応だけである。結果的には自民党政権時代と大した 差はないということになる。


    このような政府の経済政策を前提に今年の経済を予測する。本誌の予想は、GDPを構成する需要項目毎に予想を行いこれらを積み上げる。

    まず消費は全く期待ができない。可処分所得がこれだけ減少すれば、消費が増えるはずがない。場合によっては、昨年以上の落込みを予想している。またエコポイント政策は需要の先食いであり、今年はこの反動が予想される。


    投資項目はバラバラである。はっきり減少するのは公共投資である。国の公共投資は18%の減少である。国の公共投資が減ることに応じて地方の公共投資も減る。ただ地方交付金が多少増えるので地方の公共投資の減少は多少カバーされると見る。

    設備投資は多少回復すると見ている。ここのところ日本の設備投資は対前年で20%以上のマイナスが続いている。しかしいくらなんでもこのような異常事態がずっと続くことはないと考える。輸出企業を中心に設備投資は多少持直すと見ている。

    住 宅投資は横這いと見ている。政府はエコ住宅推進政策を採っているが、住宅建設は伸びないと考える。住宅ローンの返済で苦しんでいる人が多く、さらに雇用不 安があるのだから、エコ住宅減税ぐらいで家を購入しようという者はいない。昨年と同じ80万戸程度の住宅建設着工に止まると見ている。


    輸 出は伸びると見る。引続き不調なのは日本だけであり、波はあるが新興国の経済はかなり回復している。また欧米も多少持直す気配がある。これを反映し日本の 貿易・サービス収支の黒字は月を追うごとに大きくなっている。また菅財務相の「円相場は95円程度が適正」発言の効果が続くようなら、輸出企業とって為替 は大きな障害にはならないと考える。

    これらの予想を合計すると、今年の経済成長率は冒頭の政府見通しを若干下回る程度と予想される。しか し経済情勢が悪化すれば、政府は何らかの対応を行うと考える。例えば小さな補正予算の策定などである。したがって最終的には、日本の経済成長率は政府の予 想に極めて近いものになると思われる。ただ前述したように10~12月のGDP統計の速報値の公表が、一つのターニングポイントになる可能性が少しはあ る。


    このように見てくると、民主党連立政権が目指した内需依存型の経済への転換はとうてい無理な話である。つまり政権交代がなされても何も変わらない。まるで自民党政権が続いているような錯覚に陥るのである。

    来週は、日本の財政が危機という根拠のない話が続いていることを取上げる。

  • 2009年12月21日 (月)

    今年を振返って

    新年は1月11日号からです

    09/12/21(597号)経済コラムマガジン

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    今年を振返って

    • 日本だけは二番底へ?
      本誌は今週号が本年の最後であり、ちょっと今年を振返ってみようと思う。色々とあった中で、一番のトピックスは、やはり政権交代と個人的にはそれに伴って亀井さんが金融・郵政担当大臣に就任したことである。

      亀 井静香氏は、自社さ政権の画策者や自・自連立、自・自・公連立の中心人物の一人と目されている。世間にはこのような政権工作が得意で、政局の人と思い込ん でいる人々がいる。しかし筆者は、亀井さんは政策の政治家と思っている。自民党時代の政調会長や今の閣僚と言ったポストが似合っている。今、本人も生き生 きと活躍している。


      亀井大臣は、手際良く臨時国会で債務返済猶予法案(中小企業金融円滑法案)と日本郵政改革法案を仕上げた。特に債務返済猶予法案は臨時国会での成立は無理ではないかと危惧されていた。筆者も、せいぜい金融庁の検査マニュアルを年内に見直す程度と思っていた。

      ところで今後この法律が実効を上げるかが注目される。実効が上がらない場合は手直しも必要であろう。筆者は保証協会の保証割合が4割になっているのが気になる。4割程度で本当に銀行が債務返済猶予に応じるかということである。

      保 証割合が4割と低くなった背景には、新銀行東京の乱脈融資が影響している気がする。審査能力のない新銀行東京が返す気がない者にどんどん融資を行い、不良 債権を大量発生させた。このことをきっかけに、信用保証協会の保証割合が10割から8割に引下げられたと聞く。また保証付き借入の申請書類の作成が大変に なったようである。もし返済猶予法案の実効が上がらない場合は、保証割合を引上げることも検討する必要があると考える。


      次は今年 の日本経済を振返る。やはり昨年9月のリーマンショック以降の異常な消費の減少によって、世界的な急速な経済の落込みがあった。日本でも昨年10~12月 さらに今年1~3月のGDPは二桁のマイナス(年率)を記録した。3月までの在庫調整は過去にちょっと経験したことがない規模であった。

      さ すがに4月以降はこの反動が起り、また新興国から経済の復興が始まった。さらに各国が財政と金融の両面から対策を講じたため、世界経済は最悪期を脱出し た。少なくとも9月までは世界の経済は回復を示している。日本も麻生政権の景気対策と輸出の持直しによって7~9月は低いながらプラス成長に転じた。


      問 題は10月以降の経済の動向であり、はたして二番底があるかということである。11月に米国の対前月の物価変動がプラスに転じ、金融緩和政策の転換が早ま るのではないかという観測が流れている。しかし筆者は、これは米ドル安によるものであり、米国経済はまだ底を這っていると見ている。中国などの新興国の経 済が力強く回復しているといっても、最終需要国である米国の存在は依然として大きい。新興国の経済発展に期待する声が大きいが、これらの国の経済規模は決 して大きくない。

      今後も米国の経済動向が世界に及ぼす影響が大きいのに、米国経済を軽視する論調が大きいのが気になる。筆者は、日本を除 き他の国の回復は鈍るか、あるいは米国のように底を這うことになると見ている。しかし日本だけは二番底に向かって再びマイナス成長に戻る可能性が高いと感 じている。


    • 景気ウオッチャー調査
      筆者は、直近の経済の状況を一番適切に伝えてくれる情報は景気ウオッチャー調査(街角景気)と見ている。同じ内閣府の発表する景気動向指数やGDPの速報 値より、筆者はこちらの方を信頼している。特にGDPの速報値は、集計が遅過ぎること、また設備投資のブレが大き過ぎることなど問題が多すぎる。しかし社 会的にはGDPの速報値が一番重要視されている。ところでGDPの速報値は実質値ばかりが注目されているが、デフレが続く日本では名目値がもっと重視され るべきであろう。

      12 月8日公表された11月の景気ウオッチャー指数は33.9と前月から7.0ポイントも低下した。これは調査開始以来、最大の下落である。しかし科学性に劣 るという理由なのか、景気ウオッチャー調査は軽視されている。同日に公表された10月の景気動向指数の一致指数の方は7ヶ月連続の上昇を示している。しか し景気ウオッチャー指数は数カ月前から既に足踏みから下落傾向を示していた。


      景気動向指数は、権威はあるが景気ウオッチャー調査 (街角景気)に比べ経済の動向を正しく示しているとは言えないと、筆者はずっと思っている。景気動向指数のデータは、過去から経営が継続している優良企業 から得られたものと考えられる。このような企業は経営基盤がしっかりしており、悪い数字がなかなか出てこないのである。

      日銀などの調査に も言えるが、継続してデータを取れる企業は決して平均的な企業ではない。ところがこのような優良企業のデータを元にした経済数字は良く見えるので、政府や 与党にとって都合が良かったのであろう。しかしこのため政府の経済対策が常に遅れるのである。世間の実感からかけ離れたこれらの数字を信じて経済を語って いたから、自民党は支持者を失ったのである。

      筆者は、10月あたりから、再びかなり急激に日本経済は落込み始めたと見ている。前段で日本経済だけが二番底に向うリスクがあるという根拠の一つは、この景気ウオッチャー調査(街角景気)の結果である。


      日 本では、ケインズ経済学上では考えられないことが起っている。給与や賃金が下落しているのである。ケインズ経済学は賃金の下方硬直性を指摘している。一 方、新古典派経済学では労働への需要が減れば、賃金が下がることによって失業が発生しないことになっている。これに対してケインズ経済学では賃金には下方 硬直性があり一定以下には賃金は下がらず、失業が発生するとしている。

      ケインズの指摘は、当時の英国で大量に出ていた失業者の発生メカニズムを説明するものであった。ケインズのこの失業理論は欧米では程度の差はあるが今日でも有効である。ただ日本だけが例外となってきたのである。


      今年、日本では、給与やボーナスのカットが平気で行われた。賃下げは公務員の俸給にさえ及んでいる。一方、失業率は依然先進国の中で一番低い。これらの現象を見ていると、日本の労働市場だけが、新古典派経済学の理論が適用される世界になってしまったと見られる。

      20 年前までは考えられなかった給与やボーナスのカットが公然と行われるようになって(ボーナスはカットされることがあっても、給与がカットされることはな かった)、国民の可処分所得が大きく減っている。日本経済が二番底に向かうのではないかと筆者が考えている二番目の根拠はこれである。景気ウオッチャー調 査にもこれがいち早く反映されている可能性が高い。しかし失業率があまり大きくならいことに安心しているのか、民主党連立政権は「国債の発行44兆円の死 守」なんてのんきなことを言っている。


    今年もなんとか終わりそうである。新年の第一号は1月11日を予定している。では皆様良いお年を。

    2009年12月12日 (土)

    事業仕分けの顛末

    09/12/7(596号)経済コラムマガジン

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    事業仕分けの顛末

    • それほどでもない成果
      民主党(途中から国民新党も一人加わった)の事業仕分けが終わった。連日、マスコミが大きく取上げたため、人々の関心も大きかった。予算の無駄に鋭く切込む民主党の国会議員の姿が連日放送され、民主党の支持率がアップしたという。国民は本当に政府の無駄使いに敏感になっている。

      しかしその間に円高が進み、株式市場は連日安値を更新した(他の国の株価は上昇を続けている)。特に予算カットにからんだ企業の株価が急落した。また事業仕分け人が次々に予算カットを行っているのに、一方で菅副総理がデフレ宣言を行うなど「一体、日本経済はどうなるのだ」と不安が広がっている。


      自民党に対抗するため、元々、民主党には構造改革派や財政再建派の政治家が集まった。一方、小泉政権時代、自民党の方が構造改革や財政再建の路線に転換し一時的に国民の支持を集めた。しかし昔からの支持者からは嫌われ、彼等は自民党から離れた。

      民主党はこれらの自民党離れをした有権者の受け皿になるため、いち早く現実路線に転換した。しかし民主党の根っこは構造改革と財政再建の路線である。選挙のためこれを封印してきたのである。行政刷新会議にこの路線の最右翼の政治家が集まった。


      20年も不景気が続くのに、優遇されている公務員に対する一般国民の感情的な反発は大きい。仕分人に国費の無駄使いや公務員の天下りを指摘されることで皆が溜飲を下げている。特に今回の仕分けの作業の対象になった事業にはおかしなものが多く選ばれていたと見られる。

      実際、何でこのような事業に国費が投入されているのかと思われる案件もあった。少なくとも支持率アップの観点からは民主党の目論み通りとなった。今のところマスコミも好意的に報道している。


      しかし筆者に言わせれば成果は言われているほどなかったと見ている。この事が段々知られるにつれ国民やマスコミの評価も変わる可能性がある。

      事業仕分けで削られた予算額は、廃止1,400億円、予算計上見送り1,300億円、予算要求の縮減4,500億円、つまり合計でたった7,500億円である。この他に基金の国庫返納など(埋蔵金)が1兆円強ある。これを含めても1兆8千億円である。

      今年度の一般会計の当初予算が88兆円であったが、来年度の概算要求は95兆円とかなり大きくなっている。子供手当など民主党のマニフェストの項目を除いても、物価の下落を考えると各省庁ともダメ元でかなり大きな概算要求を行っているのである(そもそも今年度の88兆円自体が麻生政権の景気への配慮がありその前の年度よりかなり大きくなっている)。これから7,500億円を削ってもほとんど大勢に影響はない。


      事業仕分け人がバッサバッサと予算を切っているかのようにマスコミが報道しているが、客観的な数字で見ればほとんど予算は手をつけられていないと同じである。鳩山首相はせめて3兆円の削減を求めていたがこれにも遠く及ばない。

      公務員の人件費や国債の利払い、そして医療費の国庫負担など事業仕分けにそぐわないものを除けば、対象となる事業費は25~30兆円と推察される。つまり事業仕分けで切ったのはその2~3%に過ぎない。このような結果になるくらいなら、最初から各省庁に事業費の概算要求の一律10%削減を命じた方が手っ取り早かった。おそらく今後数%の追加の予算カットが行われ、来年度の予算案が出来上がることになろう。
    • 某政治家を行政刷新大臣に
      事業仕分け対象の事業が200項目に絞られた時点で今日の結果は見えていた。しかし事業仕分けが大きな成果を上げたと誤解している人々が多い。またこのケチケチ運動を続けることによって民主党の支持率がアップすると思い込む民主党関係者も多くいるはずである。

      しかしこのケチケチ運動が今後の民主党連立政権のマクロ経済政策の手足を縛ることになる。ようやく経済閣僚に鳩山総理から、円高対策と株価対策を命じられた。しかし今のところ出て来た対策は小粒なものである。たしかに事業仕分けで官僚を叩きでやっと7,500億円予算を削減したのに、大きな第二次補正予算を組むことになれば矛盾が生じる。

      当然、事業仕分けを推進した構造改革派や財政再建派の政治家は大型補正予算には反対すると思われる。また国債増発に対しては藤井財務省も強く反発するであろう。都合良く埋蔵金が見つかれば良いが、今後、財源を巡って民主党連立政権は混乱するであろう。


      事業仕分けの話に戻る。民主党はこの作業を大蔵省出身の加藤秀樹氏(NPO「構想日本」代表)に丸投げした。この時点で事業仕分けの性格がほぼ決まった。加藤秀樹氏は行政刷新会議の事務局長についたが、表には出てこなかった。

      しかし三つある作業グループに各々5名ずつ加藤氏の息のかかった仕分け人が配置されていた。また仕分け人に渡される資料も加藤氏サイドで作ったものである。つまり仕分けの採決には加藤氏の意向が色濃く反映されていた。

      加藤秀樹氏について述べれば長くなるので割愛する。ただこれまでの氏の文章を読む限り、彼は財政再建論者の中の最右翼であることが分る。しかし筆者に言わせれば、長くデフレ経済が続く日本において氏の主張するように表向き財政が健全化しても、国民の生活や産業がボロボロになるなら何をやっているかということになる。


      まず仕分け人の選定方法が不明朗である。亀井金融・郵政担当大臣が「外国人(これについては後日取上げる)や市場原理主義者が選ばれている」と問題点を指摘しているが、全くその通りである。仙石行政刷新大臣は「事業仕分けは法的な拘束力はなく、最終的には政治が決定する」と弁明している。しかし藤井財務大臣は「仕分けで削られたものの復活はない」と断言している。一体どうなっているのか民主党は混乱している。

      また何を基準に事業仕分け対象の事業を選んだのか明らかにされていない。さらに仕分けの基準も不明である。このように事業仕分け自体が訳の分らないものであった。とにかく大衆にアッピールすれば良いというスタンスである。これは小泉政権に通じる。もっとも加藤秀樹氏自体が小泉政権に近い存在であった。


      しかし事業仕分けで面白いことがいくつかあった。まず小学生向けの英語教材の制作費が削られた。仕分け人が「何故、小学生に英語教育が必要なのですか」と切り捨てた。本誌05/6/27(第395号)「日本語の研究」で述べたように、この点は筆者も大賛成である。

      また仕分け人のうち6名が横須賀や厚木の市役所の職員である。つまり地方公務員が国家公務員が作った予算案をバサバサと査定したのである。おそらく各省の官僚のプライドはズタズタであろう。

      ともわれ筆者の事業仕分け作業全体の感想は「まどろっこしい」の一言ことである。加藤秀樹氏などわけの分らない外部の第三者の力を借り、事業仕分けと言った芝居がかったことをやらずとも、無駄な経費の削減なんてあっと言う間にできる。半分冗談であるが、某政治家を行政刷新大臣に据えれば良いのである。

      だいたい事業仕分けこそ政治家自身が責任を持ってやる仕事である。自民党政権時代を通じ、これまで力のない政治家(マスコミへのアッピールだけを考えるような、官僚に信頼がなくばかにされている政治家)ばかりが行政改革を担当してきたのが間違いである。

    筆者多忙なため来週号は休刊としたい。再来週号は今年の最後になる。

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    2009年11月30日 (月)

    ヘッジファンドの広報担当

    09/11/30(595号) 経済コラムマガジン

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    ヘッジファンドの広報担当

    • 失敗したカラ売り
      一ヶ月前あたりから日本国債が売られ、わずかな間に長期金利が1.3%程度から1.5%まで急上昇した。民主党連立政権下で大きな国債増発が必至ということが理由になっている。しかしこれに対し「民主党連立政権が成立し国債増発があることは既に8月に分かっていたことではないか」という素朴な疑問がある。

      実際、本誌は09/8/10(第581号)「総選挙の国債増発」(「総選挙後の国債増発」の間違い)で、このような動きが有り得ることを予想したたつもりである。3月の底値から夏場には米国の株価がかなり戻した。またヘッジファンドから逃げていた資金もかなり戻ってきており、ヘッジファンドには資金の余裕が生まれていた。


      余裕資金を持ったヘッジファンドが、次に何かを仕掛けてくるか注目されていた。考えられることの一つが日本国債のカラ売りであった。しかしこの時には外資系ヘッジファンドは日本株を買っただけであった。それまでに売り過ぎた日本株を買戻したのであった。いわゆるリバランスである。


      ところがここに来て、筆者が危惧していた日本国債のカラ売りを誰かが仕掛けてきたのである。どういうわけか、このような状況になると市場関係者やエコノミストという怪しい人々が一斉に「財政の危機」を唱える。長期金利は短期間のうちに1.5%まで上昇した。

      ところが今回は、1.5%に達するやいなや急激に長期金利が低下し始めた。つまり逆に国債が買われたのである。国債増発の懸念より、金融機関がよほど余剰資金の運用に困っていたのであろう。一斉に国債を買い始めたため、証券会社の国債の在庫が瞬く間になくなったのである。直に長期金利は元の1.2%台に舞い戻った。筆者はいずれ長期金利は低下するものと見ていたが、想像以上に早く急落したのである。


      カラ売りを仕掛けたのはやはり外資系ファンドのようだ。OECDなどが日本の国債発行の残高が異常に多いと警告したことなどをきっかけに国債を売ったのである。

      日本の国債が売られ、長期金利が上昇すると必ずマスコミは「財政危機」を喧伝し始める。「日本政府の膨大な借金はついにいくらに達し、これを一万円札し重ねると富士山の何倍になる」とか「赤ん坊を含めた日本人一人当りの借金は何百万円になる」という例の陳腐な話を持出す。


      このようにヘッジファンドの思惑は今回も外れたのである。彼等は長期金利を2%、あるいはそれ以上に持って行くつもりただったのではないかと筆者は推察している。ところが1.5%の壁ではね返された。もしヘッジファンドが逃げ遅れていたなら大きな損失を抱えていることになる。

      筆者には、彼等がもう一度国債のカラ売りを仕掛けてくるように思われる。カラ売りを仕掛けてくるとしたなら補正予算などの景気対策が決定する頃と思われる。その時にも、ヘッジファンドの「投機的な動き」を見ぬふりをし、日本のマスコミは「財政の危機状況を無視しての大型補正予算」といってまた騒ぎそうである。筆者は日本のマスコミや市場関係者にはヘッジファンドに繋がっている「ヤカラ」がいるのではないかと感じられる。彼等はヘッジファンドの広報を担当しているかのようである。
    • 急激な円高
      円高が急速に進んでいるので、久しぶりに為替相場を取上げる。筆者は経常収支が常に黒字の日本の円が高くなるのは、自然な流れと見ている。前にも述べたが90円くらいが長期的トレンド上の今日の数値であり、つまり今のところそれほど極端な円高にはなっていない(筆者は当然円安が好ましいと考えるが)。むしろ米ドルとほぼ同一歩調で下落している中国の人民元の動きこそが異常である。

      そろそろ世界各国はこのような中国からの製品輸入を拒否することを真剣に考えるべきである(古臭い観念論者のWTOなんか何の役にも立たない)。中国はまだ失業者(特に高学歴者の就職難)を抱え苦しいと訴えている。しかし苦しいのはどの国も同じである。不思議なことに、口で言われているほど人民元に対する圧力が強くならない。筆者は、これは中国に生産拠点を移した多国籍企業が政治的に動いているからではないかと見ている。


      さて経常収支の黒字を別にし、今回の円高の要因はいくつか考えられる。これらを分析することが、今後の円相場の動向を占う上で重要である。

      円高と言っているが、ドバイの信用不安が表面化する前までは米ドルの独歩安(人民元も為替操作によって連れ安になっている)であった。この大きな原因は米国の金融緩和が事前の予想より長期化することがはっきりしたことである。またこれに関連し、低金利の米ドルを調達し、これを米国外に投資する動きが活発になった。いわゆる米ドルキャリー取引であり、これが米ドル安を演出してきた。数年前、機関投資家が低金利の円を調達し海外に投資していた円キャリー取引と同じ構図である。


      さらにFOMCの議事録でFRBが米ドル安を容認していることが広く知られたことである。米政府高官は口では「強いドルは米国にとって利益である」と事ある毎に発言しているが、本音は違うのである。

      もちろん米ドル安こそ米国経済にとってメリットがある。米ドルが10%下落すれば、何もしなくとも米国の産業の生産性はほぼ10%上昇することになる。「強いドルこそ米国の国益」なんて言葉を本気に信じていた人々は頭がおかしいのである。中国が経済的に成功したのは、1ドルが1人民元だった為替レートを1ドルが8人民元まで切下げたからである(現在1ドルが6.8人民元)。


      ところが直近でドバイの信用不安が起り、強かったユーロも安くなり、とうとう円の独歩高になった。これはEUの金融機関がドバイにかなり貸付けを行っているためである。一方、日本の大手銀行のドバイの融資残高の総額は1,000億円程度と大きくはない。つまり消去法で円が買われている。

      ドバイの信用不安が他の湾岸諸国に広がるという話がある。しかし多少の動揺はあるかもしれないが、筆者はそのようなことはないと思っている。サウジアラビアなんかは、政府系ファンドを持っているくらい資金的な余裕があり、信用不安を引き起す可能性は小さい。ドバイの信用不安は前から囁かれていたことであり、ドバイは特殊と筆者は考える。


      しかしドバイの件が落着いても円高・米ドル安の要因は変わらない。最悪の場合、米ドルキャリー取引の巻き戻しが起るまで円高が進む可能性がある。またドバイの信用不安のような出来事がまた起れば、投機資金が動き為替相場がオーバシュートする可能性がある。

      ところが藤井財務大臣は為替介入に消極的ということが知られている。したがって円は投機筋のえじきになる可能性が強い。もっとも事業仕分などの緊縮財政指向なことを一方でやっており、さらに貿易収支が黒字に転換していながら、為替介入を行うなんて国際的な協調が得られるとは思われない。

    気が進まないが、来週は事業仕分けを取上げる。

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    2009年11月25日 (水)

    素朴な疑問

    09/11/23(594号)経済コラムマガジン

    素朴な疑問

    • レッテル貼りの習性
      筆者は、物の見方や人物の評価について、あまり先入観を持たないように努力しているつもりである。たしかに何らかの法則みたいなものを信じ、この法則に 沿って全てを判断する方が楽である。またそのような法則を知っているということで、自分が一段高いところから物事を見ているという優越感にひたることがで きるかもしれない。しかしこれが筆者も含め多くの人々が陥る「罠」である。

      世 の中には、何事にもレッテルを貼り何でもこれで理解しようとする者が多い。例えば財務・大蔵省出身だから全て財政再建至上主義者だとか、日銀出身だからい つも金利を上げたがっているといったふうだ。たしかに役所としての財務省のスタンスは財政の均衡であり、日銀の一番の願いは物価の安定(日銀券の価値の安 定)である。


      しかし全ての官庁出身者が官庁の行動様式に縛られているとは限らない。先週号で述べたように過去において大蔵省出身 の政治家の方が積極財政を唱える場合が多かった。また筆者は、日銀出身者(かなり高いポストまで登った人)でありながら、熱心に政府貨幣の発行を主張して おられる方を知っている(もちろんこれを財源に財政支出を行うことが前提)。

      民主党は先の日銀総裁・副総裁人事で、4人の候補者を財務省出身者という理由で蹴った。しかしその中に黒田東彦元財務官がいた。この元財務官僚は、02/12/9(第277号)「ルーカスの子供達」で取上げたように、財務官僚にしてはめずらしくリフレ政策を訴えていた。筆者は、この人物の事を詳しく知っているわけではないが、財務官僚の中では日銀の総裁・副総裁として適切ではないかと思ったのである。


      し かし野党時代の民主党は、候補者の見識などは無視し、財務省出身というレッテルを貼って拒否したのである。日銀の総裁・副総裁となれば、財務省や日銀の出 身者と候補者も絞られる。筆者は、総裁に日銀出身者がなるくらいなら財務省出身者の方が良いと思っていた。どうも三重野氏、速水氏といった日銀出身の総裁 に良い印象を持っていなかったからであろう。

      ただ福井氏と白川氏の両総裁は、日銀出身者にしては極端な政策には傾いていない。特に白川現 総裁の評価はこれからと思っている。レッテル貼りが危険ということは、今回の日本郵政社長人事での教訓の一つである。筆者はずっと亀井金融・郵政担当相と 斎藤次郎元大蔵次官は仲が悪いと思い込んでいたのである。


      しかし民主党は野党時代のこのレッテル貼りの癖が直っていない。「ダムは全て無駄」「官僚は政策決定から排除」「マニフェストは絶対」といった具合である。どうして子育て支援は良くて、公共事業は悪いのか民主党の主張を筆者は理解できない。有益な公共事業は必要である。

      筆者は、このようなレッテル貼りの「罠」に落ちない方法として、常に素朴な疑問を持つことにしている。それにしても世の中のレッテル貼りの習性を悪用して、利益を得ようとする貪欲な詐欺師的な人々で溢れているのである。


    • 怪しい話の連続
      09/6/22(第574号)「国有資産の纂奪者」で、「「改革」運動はアンポンタンな観念論者(経済学者、政治家、マスコミ人など)と、「改革」で利益を得ようとする貪欲な者が結び付いているのが常である」と述べた。しかし「改革」運動に限らず、これに似た構図の話は世の中に沢山ある。


      ま ず本誌で何度も取上げた「人間が排出した二酸化炭素で地球が温暖化」という話も、筆者はこの構図の中にあると思っている。近年、地球が温暖化しているのは 事実である。しかし「人間が排出した二酸化炭素で地球が温暖化」という結論に対しては、科学者の中にいくつもの異論がある。このことは本誌でも何回か取上 げた。ところが世の中(特に日本だけは極端)は、地球温暖化の原因が十分究明されたとは言えないのに、「二酸化炭素犯人説」で走り始めている。

      「二酸化炭素犯人説」は排出権ビジネスという奇妙な利権を生んだ。また最近ではエコ家電やエコ車が異常にもてはやされている。しかし今日「二酸化炭素犯人説」を唱えている人々は狂信的であると筆者には感じられる。


      地球は誕生以来、温暖化と寒冷化を繰返して来た。人類が出現する前から暖かくなったり寒くなったりしているのである。つまり「人間が排出した二酸化炭素」がない時代にも温暖化を経験しているのである。このような怪しい話に対しては、素朴な疑問を持つことが必要である。

      エコを唱える人々は下心があるためか論理がメチャクチャである。エコ車の販売が増えれば、トータルで二酸化炭素の排出量は増える。またエコを訴えていながら、一方で高速道路料金をタダにすると言っている。

      ま た二酸化炭素の排出量を減らすと言っても、ゼロにするというのではない。つまり二酸化炭素の総量は着実に増えて行くのであり、これでエコとは何事であろう かと思われる。ただ筆者は供給を外国に頼る化石燃料の節約には大賛成である。日本はエネルギーの確保を他国に依存しない形に持って行くべきである。しかし これは地球温暖化とは関係がないと筆者は考える。


      次に最近の禁煙運動にも怪しさと無気味さを感じる。タバコの害が異常に強調され過ぎていると見る。ただしこれに関しては日本に限ったことではない。世界中、何か禁酒法時代を彷佛させるような時代なったと感じさせられる。

      喫 煙が健康に害があることは承知している。しかし問題はその程度である。最近の研究では、煙草の害を小さくする遺伝子が見つかったという話である。この遺伝 子を持っている人と持っていない人では、タバコによる健康被害の程度が大きく異なるということである。筆者も薄々感じていたことである。


      しかしこのような医学的・科学的な研究結果であっても、狂信的な禁煙主義者は全く相手にしない。とうとうタバコの値段を2倍にしようという話が出ている。明らかに禁煙運動に乗じた動きである。

      狂 信的な禁煙主義者は「タバコ一本で5分寿命が縮む」と言った話を広めている。しかし筆者は、日本人の男性の喫煙率が先進国の中で突出して高いのに、なぜか 日本人男性の平均寿命の長さは世界でトップクラスという素朴な疑問を持つ。また元世界最長寿(120才)の徳之島の泉重千代さんが愛煙家であったという話 は有名である。


      三つ目の話として最近、民主党の政策を実行するには大量の国債の増発が必要という話が出て、急に日本国債が売られ長期金利が急上昇(その後急低下)したことを取上げる。実に怪しい動きであった。これについては来週号で述べる。

      ところで最近の素朴な疑問の一つはニキビに効くという化粧品にまつわるものである。軽やかなメロディーのCMが連日大量に流されている。しかしニキビ対策の化粧品がそんなに儲かるとは思えない。何かこのCMには怪しさが漂っている。


    来週号は日本の財政が危機状態という嘘を取上げる。危機ということを煽って利益を得ようとする貪欲な人々がいるのである。

    2009年11月15日 (日)

    民主党と官僚

    09/11/16(593号)経済コラムマガジン

    http://www.adpweb.com/eco/eco593.html

    民主党と官僚

    • 官僚化した政治家
      選挙用マニフェストが原因で、民主党連立政権がモタついている。その一つが官僚依存からの脱却するという方針である。民主党が野党時代、財務官僚を日銀総裁に登用しようとした自民党政権にイチャモンを付けていたことがアダとなっている。

      民 主党は、日銀総裁の場合は「財金分離」、つまり財政担当者に金融政策を委ねることに問題があったからと釈明している。しかし財務省と日銀の間では、人事交 流が行われている。このことから分るように既に財務官僚が金融政策にも関わっているのである(一方、日銀マンは財政政策に携わっている)。

      国 民にとっては、財政政策と金融政策がうまく噛み合っていることの方が重要で、日銀が独立性を保っているかどうかはどうでも良いことである。そもそも「財金 分離」はインフレ時に問題になることである。国が発行した国債を中央銀行にどんどん買わせることの弊害を阻止することが目的である。しかし20年ちかくデフレ経済が続く今日の日本で、ことさら「財金分離」を主張する者は世間知らずの観念論者である。むしろ政府の財政政策に逆らうように、日銀の独立性を盾に 金融引締めを行った速水日銀みたいなものこそ批難されるべきである。


      「官僚依存からの脱却」の背景の一つに官僚の性悪論があると 考える。官僚が、政治を歪め、自分達の利益だけを追求していると映るのである。たしかにそういう事もあろう。しかし政治家が、官僚を攻撃することで、マス コミや庶民から喝采を受けることを計算している面が強い。小泉政権以降の自民党も、選挙が近付く度に官僚批難を繰返していた。


      筆者が官僚に抱く問題点はこのような些末なことではない。一番問題にするのは07/5/7(第480号)「日本の公務員」から07/6/4(第484号)「金・銀の産出量と経済」で説明したような、意識しているかどうかを別にして、日本の官僚組織が本能的にデフレ経済を指向していることである。これは歴史教科書にもはっきりと見てとれる。例えば荻原重秀のように改鋳を行った政治家は、インフレを起した悪徳政治家の代表として記される。

      財 務省も、大蔵省時代と違って完全に緊縮財政指向になった。このことは大蔵省・財務省出身の政治家の傾向を見ても分る。昔は大蔵官僚出身の政治家にはむしろ 積極財政派が多かった。池田総理、福田総理、宮沢総理、そして相沢英之氏などである。特に福田元総理は財政均衡派と見られていたが、オイルショック後の世 界的な不況に際して、積極財政を展開した。財政再建を目立って唱えていたのは大平元総理くらいのものであった。やはり消費税導入以降、大蔵省・財務省には マクロ経済はどうでも良いという雰囲気がまん延しているのであろう。


      民主党は、政策決定に「官僚を入れない」という方針である。国会答弁からも官僚を排除するという。筆者は政治家が官僚をうまく使いこなせば良いと素朴に思う。本来、政治家は、例えばデフレ指向に傾きがちの官僚に対して、「それは間違い」と大きな指針を示すべきと考える。

      しかし今日、事業仕分などに見られるように、政治家がむしろ官僚の仕事を担うようになった。官僚を信頼しない政治家の方が今日官僚化しているのである。デフレを好む官僚と官僚化した政治家しかいない日本が、デフレ経済から脱却するのは「夢のまた夢」の話になっている。


    • 公務員の天下りの根絶
      二番目の官僚の問題点は常識がないと言おうか、末端の情報に疎いことである。端的なこの例として法務省が裁判員制度のテレビCMに酒井法子氏を起用したこ とが挙げられる。地元の者なら誰でも「この人選はヤバイ」と思ったはずである。案の定、問題が起ったのである。しかし世間知らずは法務省の官僚に限ったこ とではない。

      と ころが大蔵省・日銀の過剰接待が問題になって以降、事実上、公務員と民間人が交流することが禁止されている。このようなことを続けておれば、官僚はますま す世間に疎くなる。筆者は奇妙な法律が増えたのもこの事が影響していると考える。そう言えば規制緩和や構造改革で経済が成長するという「嘘話」に真っ先に 飛びついたのも、末端の経済を知らない官僚達であった。

      筆者は新卒者を公務員に直接採用することに問題があると考える。世間がこれだけ複 雑になっているのだから、例えば公務員の採用条件に「最低3年以上の社会経験が必要」といった項目を加えれば良いと考える。裁判官も同様であり、このよう な採用条件にすれば、裁判員制度など不要である。

      以上の二点が日本の官僚組織の最重要な問題点と筆者は考える。しかしこのようなことを日本のマスコミが問題として取上げることはない。むしろマスコミは次に触れる「公務員の天下り」などに人々の関心を向けようとしている。


      民主党は、マニフェストに掲げた「公務員の天下りの根絶」というスローガンに振り回されている。「根絶」といった極端な表現を使ったことで自らの首を絞めている。まるで政権交代は起らず、自分達の野党時代が続くとでも思ったのであろうか。


      ま ず日本の定年制度の話から始める。民間で55歳の定年制度が一般化した明治の時代の平均寿命は50才くらいであった。つまり事実上の終身雇用であった。ま た公務員には定年がなかった(ただし退職金割増による勧奨制度というものが今日はある)。このような時代は今日のような「公務員の天下り」が問題になるこ とはなかった。

      しかし日本人の平均寿命がどんどん伸びため色々な問題が起るようになった。民間は定年を60才に延長した。しかし年金支給 開始年齢が上がっているので、定年がさらに延長する可能性がある。ただし民間は50才台の前半で給料のピークが来るような賃金カープに変えている。一方、 公務員は退職の勧奨年齢まで俸給が上がり続ける給与体系になっている。


      「公務員の天下り」だけが問題になっているが、民間でも大 企業は子会社を沢山作って退職者のOBの受け皿にしてきた。子会社の中にはOBの受け皿を主な目的に作られたものもある。親会社が資材を購入する場合は、 これらの子会社を通した形にし、子会社にマージンを落としこれをOB退職者の給料に充てていた。

      ただ20年もデフレ経済が続き、大企業は 子会社をどんどん作るわけに行かなくなった。子会社も生え抜きの者が育ち、簡単には親会社のOBを受入れられなくなった。一方、官の方は国費でOB退職者 の受け皿となる公益法人を作り続けている。このように退職者の待遇で官民の格差が大きくなった。もちろん大企業より雇用条件がずっと劣悪な中小・零細企業 の従業員にとっては、「天下り」なんて夢の世界の話ということになる。


      職員より役員の数の方が多い公益法人が目立っている。また国が無意味な資格制度をどんどん作り、これを公益法人に所管させている。とんでもないことにこれらが民間の経済活動を邪魔しているのである。

      一般国民が「官」に不満を持つのは当り前である。しかし「公務員の天下りの根絶」をしなければ何事も始まらないという民主党の方針も問題である。今日、これ以外にもっと重要な経済問題があるはずである。


    来週は、素朴な経済に対する疑問をテーマにしたい。

    2009年11月 9日 (月)

    首都圏のハブ空港

    09/11/9(592号)経済コラムマガジン

    http://www.adpweb.com/eco/eco592.html

    首都圏のハブ空港

    • 15分で説得
      羽田空港の第4滑走路(D滑走路)の完成(来年)を前にして、前原国土交通大臣の「羽田空港のハブ空港化構想」発言が注目を集めている。前原大臣のハブ空 港の概念を別にして、今週は首都圏におけるハブ空港について述べる。どういう訳か、最近本誌が取上げるテーマは亀井静香氏が必ずからんで来る。まるで日本 で政治家と呼べるのは、亀井氏しかいないのではないかと言う錯覚にさえ陥る。

      羽 田空港の第4滑走路の建設も、亀井さんが、自民党の政調会長時代、運輸省の官僚を説得し調査費を付けさせたのがスタートである(石原都知事の話ではわずか 15分で運輸省を説得したとのこと)。石原都知事が羽田の混雑緩和と国際化を睨んで、同志であった亀井氏に頼み込んだのである。ちなみにこの二人は仲が良 いのであるがしょっちゅう大げんかをしている。亀井さんによれば、石原氏が「東京さえ良ければよい」といつも我がままを言っているとのことである。


      当 時、空港がパンク状態であり(状況は日々悪化)、航空増強策についていくつかの案があった。石原都知事達が推す羽田の新滑走路建設が一つである。しかし成 田の二本目の滑走路は工事中であり、成田空港の建設で苦労している地元のことを考えると、運輸省はとても新滑走路の話を持出すことはできなかった。しかし ぐずくずしている間に状況がますます悪くなっていた。ここに「断」を下したのが亀井政調会長である。

      当時、羽田の拡張に対抗する有力な案がもう一つあった。東京湾に本格的な首都圏空港を造ろうというものである。首都圏湾奥新空港研究会がその中心であった。これを強力にバックアップしていたのが一橋大学のOBで作る一橋総研であった。


      一 橋総研は元々石原都政の政策ブレーンを目的に設立された。中心人物は学生時代から石原都知事と親友であった高橋宏氏(現在首都大学東京理事長)であった。 高橋さんは、日本郵船の副社長から、航空貨物を扱う郵船航空サービス(株)に転出された。筆者達がお会いした時には会長であった。

      郵船航 空サービス会長として日本の航空設備の貧弱さにずっと泣かされてきた。このような事情もあって、高橋宏氏は首都圏に新空港を造ろうという首都圏湾奥新空港 研究会の有力メンバーとして活動された。首都圏湾奥新空港研究会は竹村健一氏なども巻込み、一時かなりの盛上がりを見せた。竹村健一氏が新空港の必要性を テレビで何回も取上げていたことを覚えている人も多いであろう。


      親友同士の石原都知事と高橋さんとの間で激しいキャンペーン合戦があった。週刊誌の誌上でも両者は激しい論争を行っている。しかし亀井氏の決断で羽田の拡張論が勝った形になった。

      高橋氏達は、首都圏の新空港をあきらめたわけではない。亀井氏の影響力を知った高橋さん達は、亀井さんに新空港の必要性を説明した。高橋さんの話では、最後には亀井さんも「俺は判断を間違ったかな」と言っていたそうである。

      こ れ以降、高橋宏氏達は政治的に亀井氏をバックアップし始めた。例えば亀井さんに国際性を身に付けてもらうため、一橋総研の人々は米国のアーミテージ元国務 副長官との会談をセットしたりした。ちなみに日本経済復活の会の小野会長と筆者は、6年前に一橋総研の人々に対してセミナーを行ったことがある。


    • 新空港の建設を
      筆者は、羽田空港の第4滑走路建設の判断は決して間違っていなかったと考える。これでも完成まで10年もかかったのである。新空港となれば場所の選定から 始めることになり、完成までに気が遠くなるほど時間がかかると考えられる。これでは今日の空港のパンク状態の緩和にはとても間に合わなかった。ただ羽田の 新滑走路建設が決まったことによって、新空港構想が下火になったことも事実である。


      高 橋宏さんによれば、標準的な国際空港の条件は「長距離のジャンボジェットが離発着できる滑走路が複数本ある」と「24時間使用が可能」ということである。 特に欧米への直行便の離発着には、3,500m以上の滑走路が必要である。しかし首都圏では3,500m以上の滑走路は成田空港の一本(4,000m)だ けである。

      羽田は3,000mが二本と2,500mが一本である。ちなみに成田の二本目と羽田の第4滑走路は2,500mである。つまり 羽田や成田はとても標準的な国際空港とは呼べない。一時、横田基地の返還が話題になったが横田の滑走路も2,500mしかない。つまり標準的な国際空港と なれば新空港を建設する他はないのである。


      前原国土交通相の発言で「ハブ空港」化が話題になっている。しかし羽田は国際標準のハ ブ空港にはなり得ない。3,000mの滑走路では、燃料を満タンにしたジャンボジェットが離陸できないのである。羽田はせいぜいアジア向けの中途半端な 「ハブ空港」にしかならない。案外、このようなことは知られていないのである。「ハブ空港」と前原大臣は簡単に発言しているが、「ハブ空港」のことをどれ だけ理解しているのか不明である。


      筆者は野方図なグローバル経済(特に金融面)に疑問を持っている。しかし航空貨物などが増えて いるのは現実である。またこれまでお話をした通り、羽田と成田だけでは首都圏の航空処理能力に限界が来ている。先ほど述べたように早くも「羽田に5本目の 滑走路を」という声が出ている。

      第4滑走路(D滑走路)の完成を目前に、日本の貧弱な航空事情に関心が集まると思われる。新空港構想にとって今がチャンスなのである。空港建設には長い時間が必要であり、早く結論を出すことに越したことはない。

      新空港建設のための資材が不足しているわけではない(関西空港の不等沈下を考えれば、工法にはメガフロートなどが考えられるが、工法はここでは問わない)。人手も余っている。あとは財政といったバーチャルな問題だけである。


      空港のネットワークやアクセスにも不満がある。羽田は都心に近いということになっているが、都心までかなり時間がかかる。モノレールも時代の遺物になりつつある。またモノレールはやたら停車駅が増えている。

      新 空港、羽田、東京駅を結ぶ高速鉄道が必要である。当然、これは大深度の地下鉄で建設することになる。さらにこれを成田まで延長すれば、首都圏の空港同士の ネットワークが完成する。羽田は国内線、成田と新空港は国際線となる。ただどうしても成田は貨物の割合が大きくなると思われる。2016年の東京へのオリ ンピック誘致は失敗したが、次に誘致するまでにりっぱな新空港が完成していることが理想である。


    来週は、今問題になっている政治の官僚依存を取上げる。

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